退職金制度を法人保険で準備する方法とは?

優秀な人材を確保し、安心して従業員が働くことができる職場にするためには福利厚生対策資金を計画的に準備することが必要です。

福利厚生制度のしくみ

企業が負担する福利厚生は、国に義務付けされている社会保障である法定福利と、企業の任意の福利厚生制度の法定外福利があります。社会保障だけでは不足する部分を補うために企業保障や自助努力による個人保障が必要になります。

企業保障が充実していれば、個人が自助努力で個人保障を準備する負担が軽減されますので従業員が安心して働くことのできる環境整備に繋がります。

なぜ福利厚生対策が必要なのか?

企業にとって有能な人材を確保し、長年に渡って定着させるためには、退職金制度や弔慰金の準備など福利厚生制度を充実させることは欠かせません。企業の福利厚生が充実すれば満足度が高まるため働く意欲にも繋がります。

生命保険を使って福利厚生対策を行い安心して働ける環境を整備し、税制上の特性をうまく活用するようにしましょう。

死亡退職金の準備には生命保険

従業員の福利厚生では退職金制度が一般的なものとしてあげられますが、退職金には中途退職時や定年時に支払う「生存退職金」、そして死亡時に支払う「死亡退職金」があります。

退職金の準備は法人にとって負担が大きくなりますが、準備のための制度や手法には様々なものを活用することができます。その中に保険を活用して準備するという方法もありますが、この場合のメリットと適している法人保険の種類を確認しておきましょう。

逓増定期保険を活用する方法

逓増定期保険は定期保険で、期間が長期な上に死亡保険金が年齢とともに増加するという特徴があります。支払う保険料も大きいですが、途中解約した場合も高額な解約返戻金が生じます。

経営者や役員が高齢に達した時のための資金準備として活用されることが多いですが、その分損金算入できる額は少なくなります。

保険料は割高ですが契約開始後4年目で最高返戻率を迎える商品もあるほど高い返戻率が魅力の商品でもあります。

・逓増定期保険のメリット

法人から個人に資金移動する手段は役員報酬として支給するか、もしくは退職金として支給する方法以外はありません。役員報酬の場合は所得税負担が発生しますし、退職金だと所得税は軽減されても資金の移動時期を好き勝手に決められるわけではありません。

しかし生命保険を活用することで、名義変更を行うことにより法人から個人へ資金移動をスムーズに、そして計画的に行うことが可能です。

・逓増定期保険への加入の流れ
①法人で逓増定期保険に加入する

加入した逓増定期保険を個人に譲渡するまでの期間は解約返戻率を低く設定し、譲渡直後に解約返戻率が一気に跳ね上がる保険設計を行うことがポイントになります。

法人で契約し支払った保険料については、被保険者の契約年齢と保険期間によって1/2損金、1/3損金、1/4損金に区分されます。

②個人へ保険契約を譲渡する

保険契約の名義については、解約返戻率が低い時に法人から個人へと変更します。これによって解約返戻金を受取る権利は法人から個人に移ることになります。

譲渡する保険金額は、譲渡時に保険契約を解約した時受取ることができる解約返戻金の金額です。そのため解約返戻率が低い時点で保険を譲渡することにより、個人が買い取る価額を少額に抑えることが可能です。

法人は支払った保険料の半額分である保険積立金を低い解約返戻金額で売ることになるので、差額は売却損として損失計上が可能になります。

③保険契約を解約してお金を受け取る

法人から保険を受け取った個人は1年分の保険料を支払って解約返戻率が跳ね上がった後に保険を解約し多額の解約返戻金を受け取ります。

保険を解約した際に一時所得にかかる税負担が大きくならないように、保険を分割して解約するか、契約者貸付を受けて現金化するという方法が好ましいでしょう。

終身保険を活用する方法

役員が退職する予定がある場合には、役員退職金のための資金を準備しておく必要があります。その備えとして法人が終身保険に加入し、保険料を支払って退職金の資金を積み立て役員が退職する際に退職金代わりに保険契約を現物支給するという方法です。

・終身保険への加入の流れ
①法人で終身保険に加入する

まずは役員が退職する予定時期を決定し、退職までの期間解約返戻率は低いものの退職直後に解約返戻率が一気に跳ね上がる保険設計を行います。

②役員への退職金の支給を行う

役員は解約返戻率が低い時に退職して退職金代わりに保険契約を現物支給で受け取ります。退職金の金額は退職時に保険契約を解約した時、受取ることができる解約返戻金の金額です。

解約返戻率が低い段階で保険を受取れば退職所得として発生する個人の所得税の負担を軽減できます。

法人は支払った保険料総額である保険積立金と退職金の差額をについて、特別損失で計上することが可能です。

③保険契約を解約してお金を受け取る

役員は退職金として保険を受取ったのちに解約返戻率が跳ね上がった時点で保険契約を解約し解約返戻金を受け取ることが可能です。

受け取った解約返戻金と同額を現金で支給した場合と比較すると、法人の資金支出と個人にかかる所得税負担が大きく軽減することができます。

退職金の準備で法人保険を活用するメリットとは?
・退職金の支払の際に資金繰りを圧迫しない
退職金を支払うためには支払原資の現預金が必要です。これを積立していなければ現預金を取り崩さなくてはいけなくなり資金繰りに影響します。

保険を活用して積立をしていた場合、決まった期間で同じ額を積み立てていくことから退職時には積み立て分から支払うことができるため退職金支給時の資金繰りには影響しません。
・節税効果がある
支払った保険料は一定条件を満たすことで経費計上が可能です。退職時にこの保険を解約した場合、それまでの資産計上額と解約金との差額を益金として計上します。ただし退職金という損金計上が可能なため、トータルでは大きく節税効果を生むことが可能でしょう。
・経営者の死により色々な費用が重なっても安心できる
日本では中小企業が大部分を占めていますが経営者の死は深刻な問題です。例えば事業承継が難航することになると金融機関が判断した場合、融資している借入金を返済するように要求してくる可能性もあります。

取引先からの信用も揺らぐ可能性があり、さらには相続税や、自社株を購入するために資金が必要になるケースもあります。そのような状況の中で、死亡退職金としてまとまった資金を受け取ることができるとかなり心強くなります。
・従業員にとっても安心できる保障
従業員が死亡した場合、その従業員の家庭が夫婦共働きの家庭であれば働き手は半分になってしまうでしょうし、一方のみが働いている場合は収入が途絶えることになります。

精神的な面でも家計の面でも大きな痛手を被ることになります。このような状況の中で非課税枠が設けられている死亡退職金が勤務先から支給されれば、金銭面でも精神面でも負担を軽減することになるでしょう。

福利厚生の充実のために生命保険で退職金の準備を

人材確保と人員の定着のためには福利厚生対策資金を準備していくことが必要です。ただし多額の費用が一時的に発生してしまい、業績に悪影響を及ぼすことがないよう計画的に行うことが大切です。

生命保険を活用して退職金を準備すれば、確実に、そして計画的に退職金を支払うことが可能となります。

ただし福利厚生で法人保険を活用するにあたっては、福利厚生規程を制定することも必要で、規程がなければ複利厚生費として認められないケースもあります。制定の手続きなどについて不明な部分がある場合には、保険のプロやFPなどにどのように手続きを行えば良いか相談してみましょう。